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研究目的と経緯

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ABOUT THE RESEARCH

研究の背景

「LGBT」等が社会的に注目されるようになる以前から、学問の世界では、性的指向(どの性に性的に惹かれるのか、あるいは惹かれないのか)や性自認(自分をどの性別だと感じるか)にかかわる研究が積み重ねられてきました。他分野から大きく遅れをとっていた日本の人口学でも、本研究チームが中心となって研究を進め、学会等の活動を通じて『セクシュアリティの人口学』(2022年に原書房より刊行)に成果が収められるに至っています。

しかしながら、性的指向・性自認を含めた人口学的研究はまだ緒についたばかりであり、重要な要素である、結婚・パートナーシップ形成、出生、居住地の移動、死亡の研究でSOGIが扱われることはほとんどありません。学術的な手法にのっとった性的指向・性自認にかんする研究の蓄積は、性の多様性の実態の理解とそれに基づく施策の検討に不可欠ですが、研究を進めるにしても、日本全体の傾向を把握でき、なおかつ信頼できるデータがないのが実情です。

そこで、本研究チームでは、全国のデータに基づく研究を行う準備を重ねてきました。2019年には結果を大阪市の住民の傾向を把握できる調査(大阪市民調査)を実施しました(osaka-chosa.jp)。その経験を糧にして、この度、日本全体について、代表性のあるデータを集めるために、公募による科学研究費を獲得し、2021年度から本研究に着手しました。

Purpose of the Research

研究の目的

この研究が目指すことは以下のとおりです。

(A)性的指向および性自認のあり方による格差や性的マイノリティの生きづらさの解消に向けた施策を進める上で必要な、学術的に信頼でき、なおかつ日本全体の傾向を把握するためのデータに基づく成果を提供すること

(B)国際社会においても、日本の男女共同参画政策の一環としても拡充が求められている「ジェンダー統計」に性的指向と性自認のあり方を統合させ「SOGI統計」に向けた検討を行うこと

(C)性的指向と性自認のあり方にかんする量的データを収集するための方法論を確立するとともに、確立された方法論に基づくデータを用いることで性的指向と性自認のあり方を人口学の核として扱うための基盤をつくること

具体的には、次のような課題に取り組みます。

Purpose of the Study

研究の意義

この研究の意義は、第1に、日本全体について代表性のあるSOGIにかんするデータを提示できることです。SOGI別の人口割合推定、SOGI別の経済状況や健康状態の比較、性的マイノリティの家族形成や居住地移動にかんするデータは、国、自治体、企業、NPO等が取り組みを検討するための基礎資料や、さらなる学術研究の土台となります。

第2の意義は、同性カップルや男女の事実婚カップルなど、多様なカップル世帯を調査票調査で捉える方法の検討を通じて、家族・世帯にかんする人口学的研究に貢献できることです。同性カップルやトランスジェンダーを含むカップルの割合や地域分布、異性間・同性間などのさまざまなカップル関係にある人の健康や経済状況の比較分析も可能となります。。

第3に、本調査での試みを経て、このチームで蓄積した知見をもとに、SOGI調査のガイドライン(個人のSOGIとカップルタイプを適切に捉える設問と調査手法の手引き)を提示することです。近年、国、自治体、研究者による調査でSOGIを含めることが検討されはじめています。特に調査における性別のたずね方については、エビデンスに基づいた指針が各方面から求められています。

第4に、欧米諸国中心に行われてきたSOGI人口学の先行研究がどの程度日本に当てはまるのか、また欧米中心に蓄積されたSOGI研究の知見を批判的に検討し、東アジアの視点に基づく実証研究を国際的に発信できることです。